【生成AI×著作権】第3回|「誰が著作者になるのか?」

― 企業・外注・生成AIが絡むときの著作者判断と実務リスク ―

生成AIを業務に取り入れる企業が増える中で、実務上もっとも混乱が生じやすいのが
「結局、誰が著作者なのか?」
という問題です。

制作に関与する主体が、

  • 企業(発注者)
  • 外注先(制作会社・個人)
  • 生成AI

と複数存在する場合、著作者の帰属を誤ると、権利行使ができない/契約が空文化するといった深刻なリスクが生じます。

本稿では、判例と従来の著作権理論をベースに、生成AI時代の著作者判断を実務的に整理します。


1 大原則:「著作者=創作した人」

著作権法上の大原則は極めてシンプルです。

著作者とは、著作物を創作した者である

企業名義でも、契約書でもなく、
**実際に創作的表現を行った「人」**が基準になります。

これは生成AIが絡んでも変わりません。


2 企業が著作者になるケース(職務著作)

まず、企業実務で頻出するのが職務著作です。

著作権法15条(職務著作)

以下の要件を満たす場合、法人が著作者になります。

  1. 法人の発意に基づくこと
  2. 法人の業務に従事する者が作成したこと
  3. 職務上作成されたこと
  4. 就業規則等に別段の定めがないこと

たとえば、

  • 社内デザイナーが業務としてAIを使い制作
  • 企画・指示・選別がすべて社内で完結

という場合、企業著作者が成立する余地があります。

ただし重要なのは、
👉 「人の創作的寄与」が前提
という点です。

AIがほぼ自動で出力し、人の創作性が認められなければ、
そもそも「著作者」という議論自体が成立しません。


3 外注制作の場合:著作者は原則「外注先」

次に多いのが、制作を外部に委託するケースです。

原則ルール

  • 外注先が創作した
    外注先が著作者

これは、生成AIを使っていても変わりません。

「お金を払ったから」「指示を出したから」
という理由だけで、著作者が発注者に移ることはありません。


4 契約でよくある誤解:「著作権譲渡=著作者?」

実務で非常によくある誤解がこれです。

「著作権譲渡契約があるから、著作者は企業」

これは誤りです。

  • 著作者:創作した人
  • 著作権者:権利を持つ人

は別概念です。

生成AI案件ではさらに厄介で、

  • そもそも著作物性がない
  • 譲渡対象の著作権が存在しない

というケースも珍しくありません。

この場合、

  • 著作権譲渡条項は空文化
  • 契約リスクだけが残る

という結果になります。


5 生成AIが関与した場合の著作者判断

では、生成AIを使った場合、著作者は誰になるのでしょうか。

① AIは著作者にならない

現行法上、AIは著作者になりません
著作者になれるのは「人」に限られます。

② 判断軸は「誰の創作か」

ポイントは一つです。

創作的表現を行ったのは誰か

  • プロンプト設計
  • 試行錯誤
  • 出力結果の選別
  • 修正・加工

これらを主導した「人」が、著作者候補になります。


6 実務で問題になるグレーケース

ケース1:企業が指示、外注がAI操作

  • 企業:ざっくりした指示
  • 外注:プロンプト設計・選別を主導

外注先著作者の可能性が高い

ケース2:外注は操作のみ、企業が全判断

  • 企業が詳細なプロンプト設計
  • 出力結果の選択・修正も企業

企業側に著作者性が認められる余地

ケース3:ほぼ自動生成

  • テンプレプロンプト
  • 自動生成→即使用

著作物性自体が否定される可能性


7 判例思考で考える「誰が創作したか」

生成AI直接の判例はまだ少ないものの、
裁判所は一貫して、

  • 誰が表現を決定したか
  • 誰の判断が結果に反映されているか

を見ています。

これは、

  • ゴーストライター事件
  • デザイン外注事件
  • 写真著作物性判例

すべてに共通する考え方です。

生成AIは、
判断主体を見えにくくするだけで、
判断基準そのものを変えるものではありません。


8 企業・クリエイター向け実務対応まとめ

① 著作者を「契約で作れる」と思わない

創作実態が最優先。

② 創作プロセスを可視化する

誰が何を判断したかを記録。

③ 契約は著作者前提にしすぎない

利用許諾型・責任分配型へ。


生成AI時代の著作者判断は、
「誰がボタンを押したか」ではなく、
**「誰が表現を決めたか」**で決まります。

この視点を持たずに契約や運用をすると、
権利のないコンテンツを、権利がある前提で使う
という最悪の事故が起こり得ます。

次回は、
第4回|「企業は生成AIコンテンツをどう使えば安全か?」(利用・契約設計編)
へ進みます。

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