写真の著作物性はどこで決まる?構図・アングル・タイミングの重要性

はじめに

私たちが日常的に目にする「写真」。SNSでの投稿、報道記事、スポーツ誌、広告ポスターなど、その用途はさまざまです。では、その写真すべてに「著作権」が認められるのでしょうか?

実は、写真であっても“創作性”がなければ著作物とは認められないのが日本の著作権法の考え方です。では、創作性とは何か?そして、どんな写真なら「著作物」として保護されるのか?

この記事では、プロ野球選手の打撃フォームを捉えた一枚の写真が、実際の裁判で「著作物」と認められた判例(東京地裁 平成14年5月31日)をもとに、**写真の著作物性を判断する上で重要な「構図・アングル・タイミング」**について解説していきます。

写真を撮るすべての人にとって、知っておきたい内容です。

■ 裁判情報

  • 裁判所:東京地方裁判所
  • 判決日:平成14年(2002年)5月31日
  • 事件番号:平成12年(ワ)第25997号 など
  • 争点:プロ野球選手の打撃フォームを撮影した写真に著作物性が認められるかどうか

■ 事案の概要

写真家Xは、プロ野球選手のイチロー選手の打撃フォームを撮影した写真について、著作権侵害を理由に、無断で写真を使用した出版社Yを相手取り、損害賠償と差止めを求めた。

被告側(出版社)は、「写真に創作性はない」と主張し、著作物性を否定した。

■ 判決の要旨(東京地裁)

裁判所は、写真の著作物性を肯定し、以下のように判断しました:

1. 写真の著作物性(創作性)

  • 本件写真は、単なる記録写真ではなく、撮影者が打撃フォームの一瞬を選んで構図を決定しており、
  • 被写体の選択、撮影時のアングル、シャッターチャンスなどに創作的な工夫が見られる。
  • よって、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当し、著作物として保護される。

2. 写真の使用行為は著作権侵害に当たる

  • 被告が許諾なく本件写真を出版物に使用したことは、著作権者の複製権・公衆送信権等を侵害するものであり、著作権侵害が成立する。

■ 判決の意義

この判決は、日本におけるスポーツ写真の著作物性を明確に認めた判例として重要です。ポイントは以下のとおり:

【実務上のポイント】

  1. スポーツなど動的な場面でも、撮影者の創作性があれば著作物性が認められる
  2. 構図・アングル・撮影タイミングなどの「写真家の選択」が著作物性の判断要素
  3. 報道目的の写真でも、著作物性は否定されない(記録性 vs 創作性)

 

■ 判例の位置づけ

この裁判例は、写真の著作物性に関する代表的判例として、他の裁判でも引用されることがあり、特に報道写真・スポーツ写真などにおける著作権の判断基準を示したものです。

■ 参考文献・判例集への掲載

  • 判例時報 1792号 127頁
  • 判例タイムズ 1105号 204頁
  • 知的財産法判例教室(有斐閣)などで紹介あり

写真の著作物性に関する判例整理資料

■ 判例タイトル
東京地裁 平成14年5月31日判決(プロ野球選手の打撃フォーム写真)

■ 概要
写真家Xが、プロ野球選手イチロー選手の打撃フォームを撮影した写真について、出版社Yが無断使用したことから、著作権侵害を理由に損害賠償と差止めを請求した事案。

■ 主な争点
本件写真が著作権法上の「著作物」として保護されるか(=創作性があるか)

■ 判旨(東京地方裁判所 平成14年5月31日)
1. 本件写真は、単なる記録目的ではなく、撮影者が構図・アングル・シャッターチャンスを選択しており、「創作的表現」が認められる。
2. 撮影者の個性が反映されており、思想又は感情の創作的表現と認められる。
3. よって、著作権法上の「著作物」に該当。
4. 被告の使用行為は、著作権(複製権、公衆送信権など)の侵害に該当。

■ 判決の意義
– スポーツ写真や報道写真においても、撮影者の創作的な工夫があれば著作物性が認められることを明示。
– 写真の「記録性」と「創作性」の区別について、実務上の判断基準を提示。
– 今後のスポーツ・報道写真における著作権判断における重要判例。

■ 参考文献・掲載
– 判例時報 1792号 127頁
– 判例タイムズ 1105号 204頁
– 『知的財産法判例教室』(有斐閣) ほか

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